【シャッター修理・メンテナンス】広告予算の最適化とコンテンツ強化で「部品販売」を入り口とした良質な見込み客獲得の仕組みを構築
3行サマリー
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課題: 修理キーワードの広告競争激化によりCPAが高騰。現場での見積もり乖離による失注も多く、成約効率の低さが喫緊の課題でした。
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打ち手: 獲得効率の良い「鍵・部品販売」に予算を大胆にシフト。並行してFAQの構造化データ実装など、AI検索を意識したテクニカルSEOとLPのUX改善を推進しました。
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成果: 1,100〜1,400円という低単価で「将来の修理・交換予備軍」となる良質な見込み客との接点を獲得。オリジナル商品の売上向上と、広告に依存しない集客基盤の構築を実現しました。
実施範囲
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広告戦略: Google広告(検索・ディスプレイ・デマンドジェネレーション)の運用最適化
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サイト改善: ユーザー体験(UX)を重視したLP・ウェブサイトのディレクション
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コンテンツ: 専門知識を資産化するブログ記事制作、YouTube動画のテキスト化、FAQの整備
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分析基盤: GA4・GSC・電話計測を用いた、流入から成約までの可視化
主要成果
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戦略的顧客獲得: 部品販売(鍵等)を入り口に、1,100〜1,400円という低コストで良質な見込み客との接点を安定的に創出。
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収益性の向上: オイルやパッキンといった利益率の高い自社オリジナル商品のEC売上が大幅に増加。
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SEOの強化: 構造化データの導入により検索結果の占有率を高め、月間10,000PVを目指す堅牢なコンテンツ基盤を構築。
クライアント概要
業種 / エリア / 規模感
大手シャッターグループの一翼を担い、関東近郊を中心にシャッターの修理、メンテナンス、部品販売を専門に手掛けています。メーカー系列ならではの高度な技術力と、迅速な対応を最大の強みとするサービス拠点です。
提供サービス・単価帯・検討期間
数千円のスペアキー作成から、数万円のメンテナンス部品販売、さらには数十万円規模のシャッター修理やリニューアルまで幅広く提供しています。鍵や部品などの消耗品は即時〜数日での意思決定が中心ですが、修理やガレージ新設は比較検討を含め中長期の検討期間を要する傾向にあります。
相談時点の集客状況
当初はYahoo!検索広告を中心に集客を行っていましたが、2023年末にGoogle広告へ運用を一本化しました。紹介やリピート顧客に頼るだけでなく、デジタル接点を活用した「新規顧客の開拓」と「ECサイトでの売上最大化」を両立させるための戦略的な転換を模索されていました。
課題整理(症状 → 原因仮説の順)
症状
メインの集客経路であった「シャッター修理」の広告獲得単価(CPA)が1.5万〜3万円と高止まりし、月ごとの変動も激しく不安定な状態でした。さらに、電話問い合わせの数は確保できているものの、現場での調査後に見積もり金額が合わず失注するケースが散見され、現場の対応コストに対する成約効率の低さが問題となっていました。
原因仮説
分析の結果、2つの大きな原因が浮かび上がりました。1つ目は「修理」という広範なキーワードで広告を出稿していたため、価格の安さだけを重視する層まで集客してしまい、メーカー品質と適正価格を強みとする同社とのマッチングが起きていなかったこと。2つ目は、主要顧客層である60代のユーザーが求める「信頼の根拠」や「概算費用」といった情報が、既存のLPやコンテンツで十分に提供できておらず、疑問を抱えたまま電話に至っていたことです。
目標とKPI設計
ゴール
目指したのは、単なる「問い合わせ数の増加」ではありません。ウェブサイトを通じたコミュニケーションにより、問い合わせの「質」を高め、最終的な成約率と売上の最大化を図ること。そして、中長期的には広告に過度に依存せず、自然検索からも安定して集客できる構造を築くことをゴールに据えました。
主要KPI
具体的には、広告面では「獲得効率の良いカテゴリーでのCPA 1,500円以内」を維持しつつ、修理カテゴリーのCPAを抑制すること。サイト面ではCVR(コンバージョン率)をリニューアル前の2倍に引き上げること、SEO面では月間10,000PVの達成と、専門性の高い30本の記事投入をKPIとして設定しました。
施策全体像
短期的な成果と中長期的な資産形成を組み合わせた複合的な戦略を展開しました。
まず検索広告では、ニーズが明確で獲得効率の良い「鍵・スペアキー」に予算を集中投下し、低コストで顧客リスト(接点)を確保。LPやサイト改修では、スマホユーザーが迷わず電話やフォームへ辿り着けるようUXを磨き込みました。

さらに、昨今のAI検索(SGE/AI Overview)の普及を見据え、FAQの構造化データを実装。ユーザーの細かな疑問を解決するコンテンツを蓄積することで、「この会社なら安心だ」という比較検討段階での信頼醸成を自動化する仕組みを整えました。
施策の詳細
実施内容
フェーズ1(初期〜3ヶ月):運用基盤の再構築
まずは広告キャンペーンの構造をサービスごとに分離・整理し、各施策の採算性を可視化することから始めました。Yahoo!広告からGoogle広告への移行に伴い、入札戦略やキーワードの選定をゼロから見直した結果、鍵カテゴリーを筆頭に「どのサービスがどの程度のコストで獲得できるか」という基準値が明確になりました。
フェーズ2(〜6ヶ月):収益性重視の予算シフト

修理広告のCPA高騰を受け、予算の大部分を「部品販売・EC」へと大胆にシフトしました。これは単に安易な方向へ逃げたわけではありません。メーカー直系としての信頼が活きるオリジナル商品の販売を強化することで、修理が必要になった際に「最初に戻ってきてもらえる」関係性を低コストで築くことが狙いです。この判断により、広告費の無駄打ちが激減し、全体の費用対効果(ROAS)が飛躍的に向上しました。
フェーズ3(〜1年超):テクニカルSEOとコンテンツの資産化

広告で獲得したユーザーを確実に成約へつなげるため、また広告以外からの流入を増やすために、FAQの構造化データ(JSON-LD)を導入しました。これにより検索エンジンの検索結果に「よくある質問」が直接表示されるようになり、クリック率と信頼性が向上。また、YouTube動画の内容を専門的な解説記事へと昇華させることで、専門家としてのポジションを確立し、質の高いオーガニック流入を継続的に生み出す基盤を構築しました。
成果
主要成果
最大の成果は、部品販売という窓口を通じて、1,100〜1,400円という非常に低いCPAで「良質な見込み顧客との接点」を安定的に獲得できるようになったことです。単に部品が売れるだけでなく、将来的にシャッターの修理や交換が必要になる可能性が高い顧客層と、早い段階で低コストな関係を構築することに成功しました。

成果の内訳
広告予算の配分を「利益率と成約率のバランス」に基づいて最適化したことで、実利に直結する成果が生まれました。特にBSシャッターオイルやパッキン等のオリジナル商品は、ECでの売上が右肩上がりに成長しています。また、スマホファーストを追求したUI/UXの改善により、特に主要顧客層である高齢層からの「電話のしやすさ」が向上し、デジタル施策がリアルな商談へとスムーズに繋がるようになりました。
学び・再現ポイント
うまくいったポイント
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「フロントエンド商品」の再定義: 高単価な修理をいきなり売るのではなく、ニーズの強い「鍵や部品」をフロントエンドに据えることで、顧客獲得単価を劇的に抑えられたこと。
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現場知見のデータ化: 顧客から頻繁に寄せられる疑問をFAQとして技術的に正しい形式で公開し、AI検索時代の集客ルールに先んじて対応したこと。
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マルチチャネルの相乗効果: 動画、ブログ、広告をバラバラに運用せず、一つのテーマを多角的に展開することで、コンテンツの制作効率と集客力を最大化したこと。
つまずいた点 / 乗り越え方
運用途中の2024年夏、一時的にCVRが半減するという事態に直面しました。しかし、季節要因や一時的な外部環境の変化に惑わされることなく、GA4の詳細な分析に基づき、サイト階層とターゲットのズレを特定。単なる小手先の微修正ではなく、半年かけた抜本的なリニューアル計画へと舵を切ったことが、その後の大きな回復と成長に繋がりました。
体制と進め方
役割分担とサイクル
クライアント様には、現場での顧客の声や最新の在庫・製品情報をタイムリーに提供いただき、弊社はそれらを「売れるコンテンツ」へと加工する役割を担いました。
毎月の定期ミーティングでは、管理画面の数値だけでなく、実際のご商談状況や成約率、ECの売上推移を共有いただき、現場の感触とデータが一致するよう予算配分を毎月柔軟にアップデートしています。
次の打ち手
さらなる成長に向けて
現在は、Google広告で確立した「部品販売を入り口とした集客モデル」を、Microsoft広告やYahoo!広告へ横展開し、さらなる母集団の拡大を図っています。また、YouTube Shortsを活用したデマンドジェネレーションキャンペーンにより、まだ課題を自覚していない潜在層に対し、視覚的なアプローチで「シャッターのメンテナンスの重要性」を啓蒙する取り組みを開始しています。
「同じ課題の方へ」チェックリスト
[ ] メインサービスの広告単価が高騰し、利益を圧迫していませんか?
[ ] 問い合わせは来るものの、成約率が低く現場が疲弊していませんか?
[ ] 自社サイトが、単なるパンフレットではなく「顧客の疑問を解決する資産」になっていますか?
[ ] 低単価な「入り口商品」を活用して、将来の優良客を囲い込む戦略が描けていますか?