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BtoBマーケティングのKPI設計と数値管理の基本|目標から逆算して「機能するKPI」を作る方法

 

「Webマーケティングを始めるにあたって、目標は数値で設定したほうがいいとわかった。でも、売上や問い合わせ数を目標においていいのかがわからない」こうした状態で相談に来られる方は少なくありません。

目標を設定しても、それが現実的かどうかわからない。KPIに落とし込んでも達成できるイメージが湧かない。あるいは、KPIを設定したはずなのに誰も見ていない。こうした状況が続くと、マーケティングの取り組み自体が空回りしていきます。

本記事では、BtoBWebマーケティングにおけるKPI設計の考え方を、現場での失敗パターンも交えながら整理します。「何を目標にすればいいかわからない」という段階から、「毎週数値を確認して次の手が決まる」状態へと移行するための方針を示します。

この記事は「KPI設計と数値管理」に特化した内容です。施策の選び方については150社支援でわかったBtoB問い合わせが増えない5つの原因とやるべき最初の一手、広告とSEOの選択についてはSEOとリスティング広告はどちらが先?Web担当不在の中小企業の判断基準をあわせてご参照ください。

<この記事の目次>

  1. KGIとKPIの違いをまず整理する
  2. BtoBWebマーケティングのKPI構造
  3. ボトルネックの見つけ方
  4. 現実的なKPI設定の落とし穴
  5. 数値管理の現実的な運用方法
  6. 自社でできる範囲と、外部に頼るべき閾値
  7. まとめ
  8. FAQ

KGIとKPIの違いをまず整理する

KPIという言葉は広く使われていますが、KGIと混同されていることが現場では多くあります。まずここを整理しておくことが、正しい目標設計の前提になります。

KGI(Key Goal Indicator)は最終目標を指す指標です。「今期の売上1,000万円」「年間受注件数50件」といった、最終的に達成したい数値がKGIにあたります。

KPI(Key Performance Indicator)は、KGIを達成するためのプロセス指標です。「月間問い合わせ数10件」「Webサイト訪問数5,000セッション」「CVR1%」など、KGIへの到達を支える中間的な指標がKPIです。

現場でよく見られるのは、「売上をKPIにしている」という状態です。売上は最終目標、つまりKGIです。KPIはそこに至るプロセスを測るものなので、売上だけを追っていると「何を改善すれば売上が上がるのか」が見えにくくなります。

この2つを明確に分けて設計することが、KPI設計の出発点です。

指標 役割
KGI 最終目標 売上・受注件数・新規顧客数
KPI プロセス指標 問い合わせ数・CVR・訪問数・リード数

また、KPIは「誰のKPIか」によっても変わります。経営者にとってのKPIは受注件数や売上かもしれませんが、マーケティング担当者にとってはリード数やCVRが主要な指標になります。コンテンツ担当者であれば記事公開数や検索順位が管理対象になることもあります。KGIは組織で共有しつつ、KPIは担当者ごとに自分がコントロールできる指標に落とすのが基本的な考え方です。

 

BtoBWebマーケティングのKPI構造

KGIとKPIの区別ができたら、次は「どの指標を、どの順番で見るか」という構造を整理します。

売上からの逆算が基本

BtoBWebマーケティングのKPIは、KGI(売上・受注件数)から逆算して設計するのが基本です。たとえば「年間売上3,000万円」というKGIがある場合、次のように逆算できます。

年間売上3,000万円
→ 平均受注単価100万円 × 30件の受注が必要
→ 商談化率30%とすれば、100件の問い合わせが必要
→ サイトのCVR0.5%とすれば、20,000セッションが必要

この逆算の流れが、KPI設計の骨格になります。「訪問数を増やそう」「記事を書こう」という施策起点の議論ではなく、「受注件数を達成するために何件の問い合わせが必要で、そのためにどれだけのアクセスが必要か」というゴール起点の順番で考えることが重要です。

KGIから逆算するKPI構造図

KGI:売上・受注件数

商談数(受注率から逆算)

KPI:問い合わせ数・リード数(商談化率から逆算)

KPI:訪問数・セッション数(CVRから逆算)

KPI:検索順位・広告クリック数・流入チャネル別数値

階層ごとにKPIは異なる

正直に言うと、「共通のKPI」というものはあまり存在しません。経営者・マーケ担当・制作担当では、それぞれが管理すべき指標が異なります。

役割 主なKPI
経営者 受注件数・売上・新規顧客数
マーケ担当 問い合わせ数・リード数・CVR・CPAなど
広告担当 CV数・CPA(獲得単価)※詳細は後述
SEO・コンテンツ担当 検索順位・オーガニック流入数・記事公開数

大切なのは、KPIが「自分でコントロールできる指標」になっているかどうかです。どれだけ頑張っても自分の行動で動かせない数字をKPIにしても、行動につながりません。マーケ担当者が「売上」をKPIにしても、売上は営業や製品品質など多くの変数に左右されます。マーケ担当がコントロールできるのは、リード数や問い合わせ数であるほうが機能しやすいです。

広告KPIについて補足

中小規模の広告アカウントで追うべき指標は、実務上はCV数(コンバージョン数)とCPA(獲得単価)に絞るのが正解に近いです。

クリック率(CTR)やクリック単価(CPC)をKPIにしているケースを見かけますが、これらはいくらでも操作できる数字です。クリック率が高くてもCVにつながらなければ意味がなく、クリック単価を下げることに集中すると最終的な目標から離れることがあります。変な数字を追わない、というのが広告KPIの基本的な姿勢です。

 

ボトルネックの見つけ方

KGIから逆算してKPIを設定しても、どこに問題があるかがわからないと改善が進みません。ボトルネック(詰まっている箇所)の見つけ方を整理します。

「訪問数×CVR」がすべての起点

Webマーケティングで問い合わせが発生しない原因は、シンプルに分解すると2つしかありません。

  • 訪問数が少ない:そもそもサイトに来る人が少ない
  • CVRが低い:訪問者はいるが問い合わせに至らない

この2つのどちらに問題があるかを先に特定することが、最初のステップです。

CVRが低い場合に先に着手すべき理由

現場でよく見られるのは、CVRが低いのに訪問数を増やそうとしている状態です。広告費を増やしてPVを上げようとしても、そもそも問い合わせに至らないサイトであれば、訪問者が増えても問い合わせ数は増えません。

CVRが低い状態で訪問数を増やすのは、穴の開いたバケツに水を注ぐようなものです。CVRの改善——つまり「サイトに来た人が問い合わせしたくなる状態を作る」こと——を先に整えるほうが、同じ広告費でも成果が変わってきます。

ボトルネック診断の手順

確認項目 判断基準 次のアクション
月間セッション数 500未満 流入を増やす施策(広告・SEO)を優先
サイト全体のCVR 0.1%未満 CVR改善(LP・訴求・CTA見直し)を優先
広告のCVR 0.5%未満 LP・メッセージ・ターゲティングを見直す
受注率 10%未満 ターゲット設定・訴求・価格設計を見直す

この順番で上から確認していくと、どこから手をつけるべきかが絞り込まれます。

また、CVRを改善するにあたって最初に考えるべきは「どこが特徴で、どこで差別化できるか」です。訴求がターゲットに向けて整理されているか、問い合わせの心理的ハードルが高くないかを見ることで、多くの場合は改善の糸口が見つかります。

 

現実的なKPI設定の落とし穴

KGIからの逆算という考え方は正しいのですが、それを実行するためには「相場感」が必要です。現場でよく見る失敗パターンを2つ紹介します。

落とし穴①:目標から逆算したら非現実的な数字になった

KGIから逆算してKPIを算出したとき、「過去のCVRをベースに計算したら、今の3倍のリード数が必要になった。でも予算も工数も変わらない」という状況になることがあります。

この場合、問題は2つ考えられます。ひとつは「KGI(最終目標)の設定が現在のリソースに対して高すぎる」こと。もうひとつは「CVRを動かさずに訪問数だけで解決しようとしている」ことです。

正しいアプローチは、CVRを改善することでリード数を増やすシナリオを並行して考えることです。訪問数を3倍にする必要があるなら、CVRを2倍に改善して訪問数の増加目標を半分にできないか、という視点が逆算設計には欠かせません。

落とし穴②:相場を知らないとKPIが現実から離れる

実務上の実感として、Webマーケティングの「相場感」を持たないままKPIを設定すると、現実から離れた数字になりやすいです。

たとえばCVRの「相場」については、業界・CVの種類・アクセスの質によってまったく異なります。「BtoBのCVRは◯◯%」という情報をネットで見かけることがありますが、これは根拠が薄いことが多く、鵜呑みにするのは危険です。分母にどんなアクセスが含まれているか(ターゲット外のアクセスが多ければCVRは下がる)によって数値は大きく変わるため、他社の数字をそのまま自社の目標にはできません。

よく見るのは、ニッチなターゲットを狙ういままでWebマーケティングをやってこなかった企業が、新しいドメインでサイトをリニューアルして初月から月10件の問い合わせを目標にするケースです。新ドメインはSEO評価が育っていない、広告も最適化に時間がかかる、そもそも検索ボリュームが少ないという条件が重なると、初月から問い合わせを複数獲得するのは構造的に難しいことが多い。これはKPIの問題というより、マーケットや競合・Web集客の相場を理解していないところから来る失敗です。

相場感を身につけるには、実際に施策を走らせてデータを積み上げるか、支援実績のある外部パートナーに相談するのが現実的な方法です。

 

数値管理の現実的な運用方法

KPIを設定しても、定期的に数値を確認して改善につなげる仕組みがないと、KPIは形骸化します。正直に言うと、放っておくと数値はほぼ見られなくなります。

GA4は中小企業には難易度が高い

Googleアナリティクス4(GA4)はWebの計測ツールとしては標準的な選択肢ですが、操作や管理の難易度が高く、中小企業の担当者が独力で使いこなすのは現実的ではないケースが多いです。GA4を活用したい場合は、支援会社を入れるのが前提になると考えておいたほうがよいでしょう。

ただし、すべての指標にGA4が必要なわけではありません。問い合わせ数やフォーム送信数といったシンプルなコンバージョンを追うだけなら、実数をExcelやGoogleスプレッドシートで管理するだけで十分です。「KPIを確認できればツールは何でもよい」というのが基本的な考え方です。

Looker Studioで見やすいレポートを作る

訪問数やCVRを定期確認する場合には、Looker Studio(旧Googleデータポータル)を使って簡易レポートを作っておくのが有効です。GA4やGoogle広告のデータを接続すれば、グラフや数値を一覧で確認できるダッシュボードを無料で作れます。毎回GA4を開いて操作するより、レポートを見るほうがハードルが下がります。

「放っておくと見られない」問題を仕組みで解決する

数値管理で最も失敗しやすいのは、KPIを設定しても誰も確認しなくなることです。これは個人の意識の問題というより、仕組みの問題として捉えたほうが解決しやすいです。

有効な対策として2つあります。

ひとつは、定期的な数値確認を短いミーティングの議題に組み込むことです。週次か隔週で15〜30分程度の数値確認の時間を設けると、KPIが習慣的に見られるようになります。

もうひとつは、数値をプッシュで送る仕組みを作ることです。Looker Studioのレポートを定期メール送信に設定する、Slackに週次で数値を流す、といった方法で「見に行かなくても届く」状態にすると、確認の継続率が上がります。

また、KPIを評価制度に組み込むことも定着を促す方法のひとつです。担当者の評価とKPIが連動していると、数値を確認する動機が自然に生まれます。

確認頻度の目安

KPI 推奨確認頻度
広告のCV数・CPA 週次
問い合わせ数(月次集計) 週次〜月次
サイト訪問数・CVR 月次
SEO順位・オーガニック流入 月次

月次より確認が遅くなると、問題に気づいて対応するまでのタイムラグが大きくなります。広告は特に週次での確認が基本です。

 

自社でできる範囲と、外部に頼るべきケース

KPI設計は、自社でも取り組める領域です。Webマーケティングの相場感がある程度わかっていれば、KGIからの逆算でKPIを設定し、走り始めることはできます。

目標に近づいていたり、近づいていなくても「なぜこの数字を追っているか」が参加者全員に理解されていて迷いがない状態なら、自社で進められます。逆に、「これで合っているのか?」という不安が続いている状態で施策を続けるのは難しいですし、メンバーのモチベーションにも影響します。この感覚が続くようであれば、外部を活用するひとつのサインです。

自社でできる範囲

  • KGIの設定(売上目標・受注件数目標)
  • KGIからのKPI逆算(概算レベル)
  • 問い合わせ数・受注数などシンプルな指標の管理
  • Excelやスプレッドシートでの数値集計

外部支援も選択肢になるケース

難しいのは、「設定したKPIが適切かどうかの判断」と「モニタリングしながらKPIを修正していくプロセス」です。

  • 設定したKPIが現実的かどうかわからない
  • CVRや訪問数の数字が何を意味するか判断できない
  • 施策を変えたときにKPIへの影響が読めない
  • 数値を確認する仕組みが作れていない

こうした状況になったとき、付き合いのある制作会社や広告会社に相談するか、KPI設計から伴走する支援会社を活用することを検討してみてください。弊社KAIZUKAは、施策の部分実行だけでなく、KPI設計のような上流から支援するスタイルをとっています。

また、環境変化によってKPIを見直す必要が生じることもあります。社内体制の変更でリードの価値が変わったり、AIツールの普及でコンテンツ制作のプロセスや相場が変わったりするケースは、最近では特に増えています。「一度決めたKPIは変えない」のではなく、状況に応じて柔軟に修正することも重要です。

 

まとめ

BtoBWebマーケティングのKPI設計を整理すると、以下の順番で考えるのが基本です。

  1. KGIとKPIを分ける:売上・受注件数がKGI、そこに至るプロセス指標がKPI
  2. KGIから逆算してKPIを設定する:受注件数→問い合わせ数→CVR→訪問数の順に逆算
  3. ボトルネックを特定する:訪問が少ないのか、CVRが低いのかで打ち手が変わる
  4. 全員が納得している状態を作る:達成不可能と思われているKPIは機能しない
  5. 数値管理の仕組みを作る:放っておくと見られなくなるので、プッシュと習慣化が鍵

KPI設計に正解はひとつではありません。ただ、「KGIから逆算して設計し、担当者が自分でコントロールできる指標に落とし込み、定期的に確認できる仕組みを作る」というこの流れを押さえておくだけで、多くの場合は前に進めるようになります。

 

自社でここまでやってみて、それでも詰まったら

KPI設計は、ある程度の相場感がないと難しい領域です。「設定してみたが、この数字が現実的かどうかわからない」「施策を動かしてみたが、数値を見て何を判断すればいいかわからない」という状況になったとき、そこが外部支援を検討するひとつの目安です。

まずは現状のKPIや数値を見せていただくだけでも、方向性の整理をお手伝いできます。相談の段階では課題が言語化できていなくても問題ありません。

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FAQ

Q. KGIとKPIの違いを具体例で教えてください

KGIは「最終的に達成したいゴール」、KPIは「そのゴールに至るプロセスを測る指標」です。

例として、「今期の新規受注を20件増やす」がKGIだとすると、KPIは「月間問い合わせ数15件」「サイトCVR0.5%」「月間セッション数3,000」などになります。KGIはひとつで、KPIはそのKGIを達成するために動かすべき中間指標を複数設定するのが基本的な構造です。

なお、KGI自体は「1階層上の目標を分解したもの」として設定するのが自然です。会社全体の売上目標があれば、WebマーケティングのKGIはその一部を担う形で設定することになります。

Q. 問い合わせが月0件の状態でKPIを設定する意味はありますか?

あります。むしろゼロの状態だからこそ、KPIを設定することに意味があります。

現状が月0件であれば、まず「月1件の問い合わせを獲得するために何が必要か」を逆算することができます。「CVR0.3%とすれば300セッション必要」「現在のセッションが50なら広告か記事で6倍にする必要がある」という形で、現状と目標のギャップが数値で見えるようになります。

問題の所在がわかれば、次のアクションが決まります。KPIがないと「なんとなく取り組む」になりやすく、施策の優先順位も曖昧になります。

Q. KPIは一度決めたら変えてはいけませんか?

変えることを恐れる必要はありません。外部・内部の環境変化に応じて、KPIを修正することは合理的な判断です。

社内体制が変わってリードの価値が変わった場合(例:インサイドセールスチームが立ち上がり、リード数よりリードの質を重視するようになった)などは、KPIを見直す典型的なタイミングです。最近ではAIツールの普及によってコンテンツ制作の相場や検索行動が変化しているため、以前に設定した指標が現在の環境に合わなくなるケースも出てきています。

ただし、頻繁に変えすぎると「KPIが変わる理由」の蓄積がなくなり、チームの行動が定まらなくなります。変更する際は「なぜ変えるか」の根拠を明確にして、関係者全員で共有することが重要です。

Q. KPIを設定したが、誰も確認していません。どうすれば良いですか?

これは意識の問題ではなく、仕組みの問題として捉えることをおすすめします。

有効な対策は2つです。ひとつは週次や隔週で短い数値確認ミーティングを設けること。もうひとつは数値をプッシュで送る仕組みを作ること(Looker Studioのレポートメール送信、Slackへの自動通知など)です。「見に行かなくても届く」状態にすることで、確認の継続率が上がります。

また、KPIを担当者の評価制度に組み込む方法も有効です。評価と連動することで、KPIを確認する動機が自然に生まれます。習慣として定着するまでは、意識的に仕組みを維持することが重要です。

Q. 支援会社に依頼すると、KPI設計もやってもらえますか?

支援会社によって対応範囲は異なります。広告運用やSEO記事作成など施策の実行を専門にしている会社と、KPI設計・戦略策定のような上流から支援する会社では、役割が変わります。

依頼を検討する際は、「施策の実行だけをお願いしたいのか」「KPIの設計や数値管理を含めて伴走してほしいのか」を明確にしてから選ぶことをおすすめします。弊社KAIZUKAは後者のスタイルをとっており、KPI設計・施策選定・実行・モニタリングを一貫して担当することができます。

この記事が対象とするのはKPI設計と数値管理の考え方です。広告とSEOのどちらを先に取り組むべきかについてはSEOとリスティング広告はどちらが先?Web担当不在の中小企業の判断基準、代理店選びについてはマーケティング支援会社の選び方と5つの判断基準もあわせてご参照ください。