中小企業は公式SNSアカウントの運用なんてやらないほうがいい
Webマーケティングコンサルタント/合同会社KAIZUKA代表。マーケ担当がいないBtoB中小企業に特化し、戦略設計から少額予算からのリスティング広告・SEO・LLMO(AI検索最適化)の実行まで、提案・窓口・実行をすべて本人が担当。担当者が変わらない伴走支援を東京を拠点に全国で提供。マーケ支援12年・150社以上。
この記事の結論
- 公式アカウントの運用が向かないのは「商品・サービスに特徴がない」「既存ファンがいない」「手間をかけたくない」の3パターン
- そもそもSNSマーケティング=公式アカウント運用ではない。むしろ公式アカウントを開設しないほうがいいケースのほうが多いくらいです
- SNS活用の本質は、良い商品・サービスを土台にユーザー自身が発信したくなる状態を作ること
- SNS広告は少額から始められるが、成果を判断できるだけのデータ量(目安として月10万円程度)は必要
- 運用を外注する場合は、金額の安さより「戦略・ブランディングの理解込みで対応してくれるか」で選ぶべき
ユーザーの情報との接点はネットの割合が年々拡大しており、なかでもSNS(ソーシャルメディア)に費やされる時間や情報量は爆発的に増えています。この流れは今後も進んでいくと見られますが、一般消費者の動きとは対照的に、企業側の対応は2周も3周も遅れているのが実態です。
使い方次第では効果を発揮するSNSアカウント運用ですが、目的なく中途半端に始めてしまい、運用コストが高い割に効果が出ないというケースは非常に多く見てきました。人員やお金に余裕の少ない中小企業においては、「SNS運用は本当にやったほうがいいのか」「SNS運用に効果はあるのか」「どのようにSNSと付き合っていくべきなのか」を、始める前にきちんと整理しておく必要があります。
公式SNSアカウントの運用が向いていないケースとは?
「商品・サービスに特徴がない」「既存のファンがほぼいない」「手間をかけずに成果を出したい」の3つに当てはまる場合、公式アカウント運用は向いていません。
「SNSをやればバズるらしいから」という理由だけで公式アカウントの開設を決めてしまう企業は今でも少なくありません。しかし目的なく中途半端に始めた結果、運用コストだけがかかって効果が出ないというケースは非常に多く発生しています。
商品・サービスに特徴がない場合
同業他社と似たようなものを扱っていて、自社の商品・サービスに際立った特徴がない場合、SNSでの発信自体が向いていない可能性があります。価格以外に優位性がない場合は、そもそもSNSをプロモーション手段として選ぶこと自体を見直したほうがよいケースもあります。
このようなケースで無理にSNSをやろうとすると、「中の人のキャラクターで勝負する」「奇をてらった発想で勝負する」といった王道ではない手段に頼ることになりますが、これは再現性がなく、成功するかどうかはほぼギャンブルです。
現在ファンがほぼいない場合
商品・サービスのファンが著しく少ない状態で、短期間での成果を狙うのは避けたほうが賢明です。ファンの有無を簡単に確認する方法として、X(旧Twitter)やInstagram、YouTubeで自社の商品名・サービス名を検索してみてください。ユーザーによる自発的な投稿がほとんど見つからなければ、ファンはまだ少ないと判断できます。
この状態であれば、まず販売数やユーザー数を増やしながら満足度を高め、ユーザーが自然に投稿したくなる環境や仕掛けを作るという中長期の取り組みが必要です。「アカウントを開設したら偶然バズった」という展開は、実際にはごく稀にしか起こりません。
手間をかけずに成果を出したい場合
「できるだけ手間をかけずにSNSで話題にしたい」という考えのまま始めても、ほぼ確実にうまくいきません。適当な運用で偶然話題になった事例は数多くある成功例の一部を切り取っただけで、参考にするには再現性が低すぎます。
公式アカウント運用だけがSNSマーケティングではない
SNSマーケティングとは「SNSを活用してマーケティング活動を促進させること」全般を指します。公式アカウントの運用はその手段のひとつに過ぎません。
SNS活用と聞くとまず公式アカウントの開設を思い浮かべがちですが、重要なのはSNSをマーケティング的に活用することであって、公式アカウントの運用そのものが目的ではありません。実際には次のような取り組みもすべてSNSマーケティングの一部です。
- ユーザーが撮影・投稿しやすいように店舗や商品の外装・パッケージを工夫する
- インフルエンサーにPR投稿を依頼する
- SNSでシェアされやすい記事やコンテンツを作る
- SNSでシェアしたユーザーに割引クーポンを配布する
- 社員が実名・会社名を出してSNSで発信する
「SNSで話題になる」とは、一般ユーザーがSNSで発信した情報が連鎖的に拡散していく現象です。フォロワー数が増えたから拡散したのではなく、情報が拡散した結果としてフォロワー数が増えます。したがって公式アカウントの運用においても、フォロワー数そのものを目標に置くのは本質的ではありません。
企業がまずやるべきことは、良い商品・サービスを作ることです。想像を超えて「誰かに伝えたくなる」体験を提供できて初めて、ユーザーは自発的にSNSへ投稿します。その上で、投稿を後押しする仕掛けをどう作るかを考える、という順序になります。
なお「予算がないのでSNSを検討している」という相談もよく受けますが、これは注意が必要です。アカウント開設自体は無料でも、本気で運用しようとすれば継続的な人件費が発生します。目的や商材によっては広告のほうがよほど費用対効果が出るケースも多く、「お金がかからないから」という理由だけでSNSを選ぶのは避けたほうがよいでしょう。
それでも中小企業がSNSを活用するメリットは何か?
初期投資を抑えられる点、消費者との継続的な接点を作れる点の2つが、中小企業にとって特に大きなメリットです。
ここまで「向かないケース」を中心に説明してきましたが、条件が揃えば中小企業にとってもSNSは十分に有効な手段です。
低予算から始められる
SNS運用や公式アカウントの開設には、Webサイト制作やシステム開発のような数百万円単位の初期投資は必要ありません。ただし企画・クリエイティブ制作・投稿運用にかかる人的コストは発生するため、「無料」ではなく「初期費用が低い」という理解が正確です。
消費者との継続的な接点になる
人は継続的に接触する対象に好意を抱きやすくなります。定期的な情報発信や、ユーザーの投稿へのリアクションを通じて、フォロー・フォロワーという関係性を積み重ねていけるのはSNSならではの強みです。
知名度がなくても大企業と互角に戦える
SNSマーケティングでは知名度のある大企業が有利に見えますが、認知度が高いからといって自動的にSNSでも成功するわけではありません。フォロワー数が伸び悩んでいる有名企業のアカウントや、知名度のある人がSNS発信でうまくいかない例は珍しくなく、これは告知配信や商品画像の投稿だけでは成果が出ないことを示しています。
SNS運用を始めると決めたら押さえておくべきことは?
「何のためにやるのか」という目的の言語化と、実際に運用する担当者の選定の2点が、成果を大きく左右します。
運用目的を明確にする
目的を定めずに「流行っているから」で始めてしまうと、貴重な時間を無駄にしかねません。最低限、次のような目的のどれに当てはまるのかを社内で共有しておく必要があります。
- 販売・問い合わせにつなげる
- サービスの認知を広げる
- ブランディングを行う
- 既存顧客との関係性を構築する
目的が曖昧なまま「とりあえずフォロワー1万人」のような数値目標を掲げるのは避け、ある程度運用の感覚を掴んでから具体的な数値目標を設定するのがおすすめです。
担当者の選定は運用の成否を左右する
SNSアカウントの運用は、誰が担当するかによって成果が大きく変わります。使う言葉や写真・動画の選び方を適切に判断するには、担当者自身が各SNSプラットフォームをどれだけ日常的に使っているかが重要な前提になります。自分でSNSを使い込んだ経験がない場合は、まず自分自身が一定時間触れてみることをおすすめします。
SNS広告は使うべきか?
ターゲティング精度の高さと少額から始められる点はメリットですが、判断に足るデータを集めるには一定の予算が必要です。
SNSの多くは、プラットフォーム上でユーザーに広告を配信できます。以下のメリット・注意点を踏まえた上で検討するのがよいでしょう。
メリット
- ターゲティング精度が高い:Facebook・Instagramなどではユーザー自身が性別・誕生日・学歴などを登録しているほか、位置情報や行動データも蓄積されているため、精度の高いターゲティングが可能です
- アカウント立ち上げ期に有効:フォロワー0からのスタート時に少額広告を組み合わせることで、初速をつけやすくなります
- 少額から実施できる:多くのSNS広告には厳密な最低出稿金額がなく、数百円単位からでも配信できます
ただし予算が小さすぎると、効果の有無を判断するために十分なデータが集まりません。広告配信の結果を学習・改善させていくというデジタル広告の強みを活かすためにも、目的や商材にもよりますが、月10万円程度は最低限確保しておきたいところです。
SNSアカウント運用と広告は別物として考える
広告を実施すべきかどうかは、アカウントの目的によります。顧客との関係構築やフォロワー獲得が主目的であれば、広告の優先度はそこまで高くありません。考えるべき順序は「SNS広告をやるかやらないか」ではなく、「そもそも広告を実施すべきか」、その上で「どのプラットフォームで実施すべきか」です。
SNS運用の外注(運用代行)を検討する場合の注意点
金額の安さではなく、商品・サービスの強みやブランディングへの理解込みで対応してもらえるかを基準に選ぶべきです。
SNS運用は、経費精算のように誰が担当しても結果が変わらない業務ではありません。商品・サービスの強み、見せ方、ターゲットユーザー像といった戦略・ブランディングの理解が前提になるため、外注先とは認識のすり合わせや情報共有が欠かせません。
運用代行の相場は企業によって幅がありますが、Instagramアカウントの企画から撮影・加工・投稿までを一括で依頼する場合、月額30万〜100万円程度が一般的な水準です。撮影のみ、撮影と加工のみといった部分委託のメニューを提供する会社もあります。弊社のようにフリーランス中心のチームで対応する場合は、月額20万〜50万円程度で支援するケースが多くなっています(※金額は依頼内容・工数によって変動します)。
SNS運用には原価や仕入れがほとんど発生しないため、費用のほとんどが人件費です。金額の高い・安いだけで判断するのではなく、「どこまで対応してもらえるのか」を具体的に確認することが重要です。低価格な運用代行を契約したものの、商品画像を機械的にアップロードしているだけだった、というトラブルも実際に起きています。
弊社ではリスティング広告運用代行と合わせて、SNS広告の設計・運用についてもご相談をお受けしています。「そもそも広告を実施すべきか」の判断段階からご相談いただくケースも少なくありません。
まとめ
SNSをやれば情報が拡散するのではなく、SNSが情報の拡散を後押しするだけだということを理解しておく必要があります。また自分自身がSNSを利用していなければ、SNSの雰囲気や文脈を正しく理解することはできません。
SNSマーケティングとは、公式アカウントの運用だけを指すものではなく、SNSに関わるマーケティング活動全体を指します。どのような手法を選ぶにしても、次の3点は共通して重要です。
- 自社の強みを把握し、独自のポジションを取る
- 目的を明確にし、それに合った体制を整える
- 中長期の取り組みとして継続する
SNSマーケティングにおいて先行者利益はすでになくなり、多くの業界で競合がひしめいています。全企業・全サービスに共通する唯一の正解となる運用方法は存在せず、企業や商材ごとに適した進め方を見つける必要があります。
SNSは基本的に「良いもの」が広がっていく世界です。中小企業がSNSマーケティングで目指すべきは、一瞬のバズではなく、社会や消費者との持続的な接点を作り、味方(ファン)を増やしていくことではないでしょうか。SNSをやるかやらないか、どの施策が効果的なのかを机上だけで議論するのは不毛です。自分で実際に試して理解するか、詳しい人に任せるかを判断してみてください。
自社に合ったSNS活用の方向性を一緒に整理したい場合は、30分の無料相談でも承っています。
FAQ
Q1. 中小企業は公式SNSアカウントを開設したほうがいいですか? A. 商品・サービスに明確な特徴があり、一定のファンが存在し、継続的な運用体制を組める場合は有効です。逆にこの3条件のいずれかが欠けている場合は、無理に公式アカウントを開設せず、まず商品・サービスの磨き込みを優先したほうがよいケースが多くあります。
Q2. SNS広告はいくらから始められますか? A. 多くのプラットフォームで最低出稿金額の定めはなく、数百円からでも配信可能です。ただし効果を判断できるだけのデータを集めるには、目的や商材にもよりますが月10万円程度を目安に確保することをおすすめします。
Q3. SNS運用代行の費用相場はどれくらいですか? A. Instagramアカウントの企画から投稿までを一括委託する場合、月額30万〜100万円程度が一般的です。フリーランス中心のチームで対応する場合は月額20万〜50万円程度のケースもあります(依頼内容・工数により変動します)。
Q4. SNSでバズるにはどうすればいいですか? A. 「SNSをやればバズる」という発想自体が誤解です。バズりはSNSが作るのではなく、ユーザーが自発的に発信したくなるような良い商品・サービスがあって初めて起こる現象です。まずは商品・サービスの価値を高め、ユーザーが投稿しやすい仕掛けを用意することが近道になります。